2015年2月27日金曜日

ひとまず退却する

 このたびの城攻めは、囲みを解いてひとまず退却する。この城攻めの目的は、敵将の佞臣小島山城守勝を討ち取ることであった。だが、人格高潔な森山としては、このようなことにはとても堪えられそうにない。

「おっさん、おっさん」
「なんじゃい。あっ。お前か」
「ヘヘヘヘ。久しぶり」
「なんで来やがったんだ。随分、長い間現れないので、ほっとしてたんだぞ。これで、やっと心静かな心豊かな毎日が送れるとな」
「へへへへ。ところで、おっさんは、人格が高潔ですかい」
「え?うん、まあな」
「おっさん。言わはることが年をとるにつれて、だんだん変になりましたなあ」
「え?そうかなあ」
「ほら、若い頃から変人や、変人やと言われてたでしょう。年とったら、変人ぶりに磨きがかかってきましたなあ。立派なものですよ」
「そりゃあ、おめえ。人間、努力しなければ一人前にはなれん」
「それからね。物忘れがひどくなったのとちゃいますか?今日のお昼に何食べました?」
「・・・・」
「ほらね。歩きながら、この動物はたまに見かけるけど、何という名前だったかな、と独り言を言っているでしょう?」
「・・・・」
「かなりの重症ですな。ボケが始まってるんですよ」
「そうかなあ」
「それから、身体中あちこちガタがきてるのとちゃいますか」
「うん」
「苦労しはりましたからなあ。恐ろしい目にあって。身体も心もボロボロですな。とても長生きなんかできないでしょうなあ」
「あれ!お前、いつもと様子が違うぞ。どうした。熱でもあるのか」
「いやね。それじゃあ元気で。バイバーイ。」

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